《製造業》在庫管理 #3:QRコードとみんなのルールが変えた棚卸し

部品棚に貼ったQRコードをスマホで読み、その場で出庫を記録するという、現場の動線に合わせた仕組みを取り入れた金属加工メーカー「A精工」では、手書きノートを解読して打ち直す夕方の作業がなくなりました。

ところが、導入して最初の棚卸しで、次の壁にぶつかりました。

事務スタッフ「夕方の入力の手間はなくなったけど、帳簿と現物の数が合わないのは相変わらずだね」

急いでいる現場スタッフが、スマホを出さずに部品だけ持って行ってしまう。手書きノートのころからあった「うっかりスキャン忘れ」が、そのまま残っていました。

みんなで考えた現場のルール

「システムだけで防ぐのは難しい。それなら、現場に負担をかけずに持ち出しがわかる工夫はないか」

みんなで頭を悩ませていたとき、事務スタッフからアイデアが出ました。

事務スタッフ「どの部品を使ったかさえ分かれば、夕方にすぐ確認できますよね。パーツトレイに目印をつけられませんか」

そこで決まったのが、パーツトレイの手前に小さな札を立てておき、持ち出すときに倒す、というルールです。

  • 朝の状態:すべてのパーツトレイの手前に、札が立っている。
  • 現場の動作:部品を取るついでに、指先で札を倒す。

終業時の確認:kintoneの一覧と札を突き合わせる

札とkintoneを組み合わせた運用を決めました。夕方の確認は、事務スタッフが担当します。かつての打ち直しの代わりに行う作業です。

終業時、事務スタッフがkintoneで「本日出庫された部品」の一覧を開きます。動いた部品は、1日に数件から十数件ほどです。

部品棚へ行き、工場長と一緒にその一覧を見ながら、倒れている札を起こしていきます。

kintoneの一覧にないのに、札が倒れているパーツトレイ。それが、今日スキャンし忘れた部品です。

事務スタッフ「このボルト、どなたか持って行きましたか。入力が入っていないみたいです」
現場スタッフ「すみません!!最後の組み立てで急いで持って行きました。」

同じ部品を1日に何度も取り出した場合など、この仕組みだけで漏れを完全に防げるわけではありません。それでも、現場と事務所が一緒に決めたルールであること、そして夕方のちょっとした声掛けが習慣になったことで、スキャン漏れそのものが減っていきました。

迎えた決算棚卸し

次の決算棚卸しの日。

kintoneから印刷した棚卸リストを手に、全員で棚の現物を数えていきます。

日頃から大きなズレが溜まっていないので、手戻りや数え直しも少なく済みました。かつて時間を奪っていた「合わない原因の究明」や「棚のひっくり返し」がなくなり、本来の業務への影響を小さく抑えられました。

まとめ:現場に寄り添い、現場とkintoneをつなぐ

A精工の改善がうまくいったのは、高価なシステムを入れたからではありません。現場と事務所のメンバーが一緒に日々の業務を見つめ直し、現場の手間をひとつずつ取り除いていったからです。

  • 作業台のパソコンまで歩く ➔ 部品棚の前で終わる
  • ログインや画面の起動を待つ ➔ カメラを向けてすぐアクセス
  • 複雑な型番を打つ ➔ パーツトレイのQRコードを読み取る

現場にルールを守らせるのではなく、現場に寄り添って、みんなで業務を見直してラクな動線を作る。そして、現場と事務所が一緒に運用を育てていく。定着したのは、そのためです。


kintoneは、オフィスのパソコンだけで使うものではありません。現場の作業動線に合わせてQRコードやスマートフォンを組み合わせることで、現場の手を止めずにデータが集まる形を作れます。

「うちの現場でも記録が続かない」とお悩みの方は、まずは部品棚の1箇所にQRコードを貼ってみることから始めてみてください。

3回にわたってお届けした製造現場の在庫管理編は、これで完結です。
シリーズ「現場とつながるkintone」では、リアルな困りごとをテーマに、今後もさまざまな現場を舞台に、現場とkintoneをつなぐヒントをお届けしていきます。

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