《製造業》在庫管理 #1:読めない出庫ノートと、合わない帳簿

kintoneを導入したものの、現場では使われないまま。「パソコンの前に座る時間なんてない」と言われてしまった。そんな経験はないでしょうか。

どれだけ便利な仕組みでも、現場の作業動線から外れていると、なかなか続きません。

では、kintoneが現場のすぐそばにあったら、毎日の仕事はどう変わるのでしょうか。

シリーズ「現場とつながるkintone」、今回は架空の町工場「A精工」を舞台に、現場とkintoneをつなぐまでの道のりをご紹介します。

今回の舞台と登場人物

A精工:従業員25名の金属加工メーカー。数百種類の部品をパーツトレイで管理していて、棚には手書きの「出庫ノート」がぶら下がっている。
専務:会社のデジタル化を進めたい2代目。現場の出庫記録もkintoneでまとめたいと考えている。
工場長:現場一筋のベテラン職人。加工やモノづくりに集中したいので、手を止める事務作業は気が進まない。
事務スタッフ:現場から回収した出庫ノートの文字を読み解き、在庫データを打ち直す日々を送っている。

決算のたびに、棚卸しでもめる

A精工には、全員がうんざりする行事がありました。決算の棚卸しです。

工場の棚には、手のひらサイズのベアリングやピンなど、見た目のよく似た部品がパーツトレイごとに並んでいます。

1日目はラインを止めて、全員で現物を数えます。大変ではあっても、ここまでは進みます。問題は2日目でした。

「現物は3個なのに、帳簿では15個になっている」
「似た型番の部品が、こっちは12個余っている」

帳簿と現物の数が合いません。記入せずに持ち出したのか、どこかで転記を間違えたのか。原因をたどろうとしても、手がかりがありませんでした。

元になっているのは、現場の手書きノートです。そのノートの運用が、すでに限界を迎えていました。

手書きノートが限界だった理由

部品を持ち出すときは、出庫ノートに品番と数を手書きする。これがA精工のルールでした。

ただ、現場は常に納期に追われています。

「今は手が離せないから、あとでまとめて書こう」と思ったまま忘れる
急いで書いた文字が、「0」なのか「6」なのか、「O」なのか「D」なのか判別できない
似た英数字の品番を、書き間違える

夕方、事務スタッフはそのノートを回収し、暗号を解くように事務所のExcelへ打ち直していました。

事務スタッフ「読めない字を現場に聞きに行くと、手を止めさせてしまって申し訳なくて。それでも数字はずれていくんです。毎日入力しているのに棚卸しで合わない、あの徒労感がこたえました」

現場にパソコンを置いても、使われなかった

「手書きで苦労しているなら、はじめからパソコンに入力すればいいのでは」

そう考えた専務は、日報や経費精算で全社的に使っていたkintoneを、現場のパソコンからも開けるようにしました。出庫管理アプリを用意し、「部品を取ったら、このパソコンから入力してください」と工場長に伝えます。

工場長「待ってくれ。部品を1個取るたびに、ここまで歩いて型番を打つのか? それは無理だ」

話は、その場で終わりました。用意した出庫管理アプリが現場で開かれることはなく、棚の出庫ノートもそのままでした。

現場が避けていたのは、入力ではなく「手間」

専務ははじめ、現場が協力してくれないのだと感じていました。けれど、そうではありませんでした。

現場スタッフにとって最優先なのは、手を止めずに製品を作ることです。

  • 部品棚からパソコンまでを往復する
  • 起動やログインを待つ
  • 型番を目で読んで、打ち直す

一つひとつは小さな手間でも、1日に何十回も繰り返せば、まとまった時間と気力を持っていかれます。現場の動線や作業のリズムから外れた仕組みは、正しくても続きません。

「パソコンのところまで来てもらうのではなく、部品棚の前から動かずに記録できる方法はないだろうか」

専務は、仕組みだけではなく、動線も見直すことにしました。


次回「現場とつながるkintone」《製造業》在庫管理 #2 では、A精工が「部品棚の前から動かずに、その場で出庫記録を終える」流れをどう作ったのかをご紹介します。

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