点検や修理で客先へ行ったとき、「前にも同じことを言った」「前回来た人はこう言っていた」とお客様に指摘されることはありませんか。前回の点検内容や申し送りが伝わっていないと、お客様とのコミュニケーションや作業の段取りに影響します。
逆に、これまでの履歴が現場でも確認できたら、日々の仕事はどう変わるのでしょうか。今回の「現場とつながるkintone」では、架空の会社「Bビルメンテナンス」を舞台に、申し送り事項が共有できる環境ができるまでの道のりをご紹介します。
今回の舞台と登場人物
- Bビルメンテナンス:社員15名ほどの設備保守会社。商業ビルや店舗の空調、受変電設備の保守点検を請け負っている。
- 社長:得意先からのクレームを受け、現場の属人化に危機感を持つ。
- 主任:現場一筋35年のベテラン。豊富な経験と高い技術力は、社内外から深く信頼されている。
- 現場スタッフ:現場の第一線で点検や修理を担当。引き継ぎのないまま急行したカフェで、手探りの対応を強いられる。
- 若手スタッフ:点検や修理の現場作業を担当。
- 事務スタッフ:電話対応や顧客連絡の窓口、事務全般を担当。
- 得意先ビルオーナー:Bビルメンテナンスにビルの保守点検を依頼しているオーナー。
- カフェの店長:得意先ビル内のカフェ店長。
猛暑の日に届いた連絡
35度を超える猛暑日、Bビルメンテナンスの事務所に電話が入りました。
「厨房のエアコンが動かなくなってしまいました。すぐ来てください!」
得意先のビルに入っているカフェの店長からの連絡でした。担当の主任は別の現場に出ていたため、急遽、現場スタッフが向かうことになりました。
店に到着した現場スタッフは、店長に声をかけました。
現場スタッフ「最近の調子はどうでしたか?」
店長「先週点検に来られたいつもの主任さんにも『カタカタと音がするし、冷えが悪い』とお伝えしたんです。あれから来てくれてないし、また最初から説明するのですか?」
現場スタッフ「申し訳ありません。急ぎで直しますので、もう一度お聞かせいただけますか」
主任が前回の点検で何を見て、店長からどんな話を聞いたのか、社内に申し送りメモは残されていませんでした。
履歴は主任の頭の中
事務所の棚には、クライアント企業ごとの紙ファイル(設備カルテ)が保管されていました。一方、主任は現場一筋のベテラン。「あのビルの設備なら、自分の頭に入っている」と経験に頼るところがあり、点検の結果を社内に書き残すことはほとんどありませんでした。

主任が担当しているビルに別のスタッフが駆けつけた場合、前回の状況がわからず、代理のスタッフは、お客様とのやり取りにいつも胃が痛い思いをしていました。
お客様からの電話では、設備が特定できない
現場での対応を難しくしている要因は、申し送りの有無だけではありませんでした。
お客様から「エアコンの調子が悪い」と連絡を受けても、電話口の説明だけではどの設備かを特定するのが困難です。メーカーや型番がわかったとしても、同じフロアに複数台が並んでいる場合、故障しているのがどの1台なのかは現場に行ってみないとわかりませんでした。
結局、現場に出たスタッフが、どの設備かを聞き取って、別の現場に出ている主任へ電話をかけてこれまでの履歴を確認するのが日常になっていたのです。
その場では直ったものの…
現場スタッフがカフェから主任に電話をかけると、心当たりがあったようでした。
主任「ああ、あのエアコンですね。部品は取り寄せ済みです。来週行く予定だったので、そのついでに直そうと思っていたのですが」
事務所にいた若手スタッフがその部品を現場へ届けてくれたことで、現場スタッフはその場ですぐに修理することができました。しかし、店長からすれば「先週伝えたのに放置され、猛暑の中でエアコンが止まってしまった」という事実に変わりはありませんでした。
クレームと、社長の決断
カフェでの一件の後、ビルのオーナーからも社長へ連絡が入りました。
ビルオーナー「点検の申し送りが伝わっておらず、現場で同じ説明を何度もさせられるとテナントから苦情が出ている」
主任の高い技術と経験に頼ってきた一方で、情報が共有されていない体制が、現場スタッフの負担とお客様の不満を生んでいました。
社長「このままではいけない。誰が現場へ行っても、状況がわかる仕組みをつくらなければ」
社長は全社を挙げた業務の見直しを決断しました。
次回「現場とつながるkintone」《ビル管理》設備点検 #2 では、Bビルメンテナンスが現場と事務のスタッフ全員で進めた、情報共有の取り組みをご紹介します。

